gamers' hideout

menu

Banner: j.dotsky's rat-life

非公認ソフトを追え!

前書

ゲームテック社刊 "速報コードエクスプレス" 45 号 (2000 年 07 月 25 日発行) に掲載したものを加筆修正。さらなる情報やご指摘等がございましたらば管理人までご連絡を。

序文

この世のすべて、表があれば裏もある…

それは我々が日々慣れ親しんだ家庭用ゲームの世界においても例外ではない。健全娯楽をうたうハードメーカーの隙をぬってひっそりと発売されてきた非公認ソフトたち。
その内容はほとんどがエロ! 怪しいモノ好きのマニア諸兄や、性的リビドーまっしぐらの青 (性) 少年たちがそれを放っておくはずもなく、そこで育まれたイリーガルソフトの世界は、今ではある種の重厚ささえ感じさせる歴史を築いた。

今回はそんな彼らの軌跡を追ってみよう。

ハッカーインターナショナル (ゲームエクスプレス)

この言葉に思わずピクリと反応した人、手を上げなさい…

そうかキミもか!

そう、今は昔 FC 全盛の時代、任○堂に喧嘩を売った勇気ある人達の事だね。会社名からにじみ出るアヤしさに負けないタイトルの数々! 当時小学生だった筆者も、FC ディスクカードの (無許可) コピーなんかをやっていたアヤしいショップで "エミちゃんの燃えろ! 野球" (本来野球拳であるべきだろう文字が当製品中では実際そう表記されていた) ほか、いろんなソフトを見たり、雑誌裏表紙の通販広告の中に燦然と輝く商品画像を見つけては、子供ながらに不思議な感動と危険なニオイを感じたものだヨ。
成人漫画家のキャラクターや AV 女優をフィーチャーしたゲーム (主に NEC PC からの移植タイトル) などで快進撃を続けていた彼らは、いちはやく時代の波を察知し、当時の家庭用最高機種であった PCEngine へプラットフォームを移行して第二の黄金期を迎えるんだ。
筆者自身のかなり曖昧な記憶によれば、この時期ハッカーは果敢にも、生首グラフィックで有名な 3D ダンジョン RPG "レディソード" などの TVCF も流していたはず。現在これを確証付けるための資料が手元にないので何とも言えないが、この記憶が確かなものならば、それなりに儲かっていたであろうことが推察できる。

なんだか話がそれてしまったので元に戻そう。PCEngine といえば、当時のユーザーは以下の三タイプに分類できるはずだ。

  • アーケードからの人気タイトル移植も多かった初期の Hu カード作品に魅了されたかたがた
  • PC ゲームからの移植が目立った中・後期の CD-ROM 作品に夢中になっていたお兄さん方
  • 前期から後期までどころか、迷うことなく PC-FX (NEC-HE の 2D 特化型次世代機) まで突き進んだマニアなかたがた

そしてそんなユーザー層に合わせてだろうか、ハッカー作品も微妙に変化していった。前述のプラットフォーム移行初期には、FC に比べて色数も多い PCEngine のパレットを活かしていたと思われる実写調のゲームが目立ったが、CD-ROM 時代になるとともにアニメ調ゲームが増えてくる。ちょうど IC カード (Hu カードは NEC-HE 規格) での最終作品となった "ボディコンクエスト II" あたりが転換期ではないだろうか。
以降は「動く + 喋る」といった CD の長所を活かす作品づくりを目指す動きがあったけれど、やっぱりハッカーといえば忘れちゃいけないのが "CD 麻雀 美少女中心派" だろう! マニアの間では有名な話であるけれど、このゲームの制作に携わったのは、後に PS で恋愛シミュレーションのメジャータイトルを生み出すことになる "○ッツラボラトリー" のスタッフだとか。キャラクターデザインなんかも、モロにトゥルーでラブなテイスト!
ゲーム内容に関して言うならば、イカサマ脱衣麻雀ゲームの王道に沿ったこの "美少女中心派" に限らず、いずれもどこかで見たようなシステムのゲームがほとんどだった。それでも物珍しさにつられた筆者のような人間は、取り扱いショップや通販広告を辿っては、高めの定価 (¥10,000 前後とか) にも負けず買い続けた。人はそれをカモとも呼ぶが、なんつうか、ロマンがあったのだ。たぶん。そう、ロマンが… (遠い眼


クイズゲーム


問題作、ハイレグファンタジー

しかし CD 作品の七作目にあたる "美少女雀士 アイドルパイ" を最後に、通販広告等の発売予定に並んだ "ボディコンクエスト III" はそのままに、ハッカーは歴史の闇に消える…このあたりに関してはなんだか黒い噂もあったようだけど、筆者自身も彼らの行方と現状には興味が尽きないので、情報お持ちの方はぜひ、もちろん匿名でかまわないのでご連絡いただければ幸い。
しかしそんな不遇の事態にも関わらず、ハッカーによって夢を得た一部の PCEngine ユーザーは決してヘコんだままではなかった!

そう! ココに現われたのが…

アジア研究会

突如 PCEngine の世界に登場したこのソフトハウス、ゲーム CD の起動にもわざわざ専用カードを用意していたハッカーとは違い、標準規格上でガシッと動作! という勇ましすぎる姿勢が衝撃的だった。タイトルとしては "しあわせうさぎ" シリーズを筆頭に、気づけば 10 本前後のラインナップ。
これらソフトはいずれも 18 禁と明記されており、ソフト路線 (R 指定級) のハッカー製ソフトよりもいっそう過激。というか性描写バリバリ。肝心のシーンに至っては、AV からサンプリングされたと思しき音声がエンドレスでループ! サービス満点? いやんエッチ! さらに一連のソフトにはナゾの裏技も存在していて、たとえば、キー操作であんなトコロやそんなトコロのモザイク解除! という具合に「いくら裏ソフトつってもやっぱヤバくないっスかアニキぃ」と、かえってこちらを心配させるほどの胡散臭さに満ちていた。
そんなソフトということで、いくらパッケージを見ても、このソフトハウスに関することは "アジア研究会" というこれまたナゾな名称と、都内某局の私書箱番号程度しかわからない。どこまでも気がかりな存在である。

そしてもう一社、忘れてはならない非公認ソフトの大御所、

西武企画 (株式会社メディック)

社名よりも "SM 調教師 瞳" という作品名のほうが有名ではないだろうか。なんといっても、パチンコ屋の景品にまでこのソフトは出回っていたらしいのだから。大人の娯楽? SFC で SM 調教。任○堂はもちろんのことだろうが、我らユーザーにとっても間違いなくセンセーショナルな事態だった。
さらに、この会社のソフト制作の手順はちょっと面白いもので、

  • ¥200 - 300 で叩き売られている不良在庫ソフトを買い込む
  • 元の ROM と西武なゲームの入った ROM を載せ換え
  • カートリッジにラベルを貼り、オリジナルパッケージに入れれば完成

というものだった。そんな妙な方法をとっていた理由はひとつ。任○堂規格外カートリッジでのソフト出荷はもちろん、ROM の書き換えや基板の改造も法律に触れてしまうためである。
なんとチャレンジ精神とエコロジカルな問屋制家内工業テイストに溢れた製造過程! そう思わんかね、チミ! ていうか筆者所有のカートリッジも、ラベル部分をよく見ればうっすらと "ウ○ニングポスト" の文字が! ほかにも "ジ○コサッカー" や "ヨ○シーのロードハンティング" のバージョンなどが存在するらしい。彼らのご冥福を祈りましょう、チ〜ン…
当時某大手ゲーム誌の特集で企画された、西武企画へのインタビュー記事を参照してみると、代表者いわく「購入した車の色を塗り替え、タイヤを交換して転売しても犯罪にならないのと同じ理屈です」とのこと。う〜ん、僕よくわかんないや…

しかしゲームはタイトルどおりのアダルトテイスト爆発で、アジア研究会ともいい勝負。モザイクカットの裏技も存在してたりして「任○堂の対策よりも、こっちは大丈夫なのかようアニキぃ」とユーザーのツッコミ心を微妙にくすぐった。
瞳シリーズの三作目にいたっては、マニアおなじみの漫画家 "町野変丸" 氏をキャラクターデザイナーとして迎えたりもし、なかなかの激走ぶりを見せてくれた。
そんな地下帝国の暴れ馬を、宿主任○堂はかなり本気でもって排除にかかったのだろうか、これまた妙なアイデアが光っていた (親亀子亀式カートリッジ) 作品 "りばーすきっず" あたりを最後に、西武企画系ソフトがリリースされることはなかった。
しかし筆者は今でも待っている、彼らの復活を! 君も見たいだろ? フル 3D の "瞳 64" を! "瞳サンシャイン" を! そしてお出かけには携帯用 "瞳アドバンス" を!

別に見たくねえか。


瞳のタイトル画面


町野変丸氏のキャラクタが光る

結び

今回ここに挙げたモノだけでなく、たとえば MD/GB/PS なんかにも非公認ソフトは存在するけれど、それらの紹介はまたの機会に。
中でも筆者のお気に入りは、SFC の "香港 97" という、上に並べたようなアダルト系ではないけれど、多くの意味でヤバそうなニオイが漂う超絶シューティングゲーム。怪しいキャラクターに鳴りっぱなしの BGM、そして半端じゃない難易度。機会があればみんなも遊んでみよう!

市場が大きくなればなるほど、ソフトの作り手やユーザー達の欲望もあらゆる方向へと膨らむわけで、需要と供給のバランスが取れた時、ハードメーカーの思惑を越えた所で裏の世界は広がってゆく。その善悪を簡単に結論づけるのは難しいだろう。

ただ、ここに挙げたメーカーやその作品群が放つ独特のテイストは、表舞台のタイトルだけではまず味わえないことは確かだ。人はなにかと怪しい空気に惹かれるものだし…

諸々の続報が入ることを祈りながら、今回はこの辺で。

参考リンク

西武企画 関連

フリーダム株式会社 (同社ミラーサイト) (Lost Link)
旧メディック。代表は高藤恭胤氏。件のゲームについての言及はないが、1974 年からの社史などが読める。
GEROMIX
瞳シリーズなどで原画や音楽を担当。その他ゲーム関連のお仕事も多い、えろばげろみ氏のサイト。近況が読める blog も。
梅宮貴子の世界 (Lost Link) (Twitter)
瞳 3 や瞳リミックス等のシナリオを担当し、現在もフリーライター業などのご活動を続ける、梅宮女史のサイト。

page top